役者を目指す人なら必ず知っていると思われる、
発声練習のときに使う有名な文章があります。
「あめんぼの歌」と呼ばれるその文章は、
実は、北原白秋による作品だったのです。

題名も「あめんぼの歌」ではなく「五十音」。
かな学習歌として書かれたもので
「4・4・5 型」の定型詩になっています。

ここでは原文をご紹介しますね。

水馬赤いな。ア、イ、ウ、エ、オ。
浮藻に子蝦もおよいでる。

柿の木、栗の木。カ、キ、ク、ケ、コ。
啄木鳥こつこつ、枯れけやき。

大角豆に酸をかけ、サ、シ、ス、セ、ソ。
その魚浅瀬で刺しました。

立ちましょ、喇叭で、タ、チ、ツ、テ、ト。
トテトテタッタと飛び立った。

蛞蝓のろのろ、ナ、ニ、ヌ、ネ、ノ。
納戸にぬめって、なにねばる。

鳩ぽっぽ、ほろほろ。ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ。
日向のお部屋にや笛を吹く。

蝸牛、螺旋巻、マ、ミ、ム、メ、モ。
梅の実落ちても見もしまい。

焼栗、ゆで栗。ヤ、イ、ユ、エ、ヨ。
山田に灯のつく宵の家。

雷鳥は寒かろ、ラ、リ、ル、レ、ロ。
蓮花が咲いたら、瑠璃の鳥。

わい、わい、わっしょい。ワ、ヰ、ウ、ヱ、ヲ。
植木屋、井戸換へ、お祭りだ。